沖縄滞在記 2014.1.2

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朝8時に起床。宮平さんの車が10時に到着するということで、先日東京から来たゆんたく高江の須乃瀬くんと9時50分くらいに宿を出る。車に荷物を載せて那覇を出発。途中で、W&Aのドライブスルーレストランに立ち寄る。ここはガソリンスタンド形式で車を停車させ、注文し、車内で食べるというシステムを採っている50年代車社会、アメリカ式ハンバーガーショップ。ポテトとコーヒーを買い、そのまま外のベンチで食べる。島豆腐を近くのスーパーで購入。高速道に乗り、一路名護へ。高速を降りると道の左側には、緑色やうす水色のグラデーション名護の海が広がっている。名護のスーパーを2軒回って食材を購入。高江での自炊料理を頼まれ、地中海風魚介料理の材料を探し、沖縄産のクチナシ、イカ。アサリとムール貝を買う。

その後に、屋我の海に立ち寄る。白い砂浜と美しい遠浅の海の青。車を停めて砂浜に出る。引き潮で向こうの島に渡る砂の小道ができているので裸足で渡ってみる。珊瑚のくだけた砂が足にちくちくささる。県道331を越えると一気に山の風景が変貌する。山は深く、延々と向こうまで尾根が続いている。木々も幹が白く、その上部はブロッコリーのように横に広がっている。南部とはまた異なる植生が広がる。平良湾を右手に眺めつつ橋を渡り、県道70号線を上ってゆく。高江共同売店を通り過ぎ、座り込み参加者が宿泊するトゥータンヤーに到着する。水色のプレハブの一軒家で、中にはキッチン、トイレ、バス、男性用の雑魚寝できる居間。そして離れとして事務所、女性用の宿泊所が設けられていた。荷物を置いて車に戻り、N4ゲートのテントを越えて、セントラルゲート前の座り込み現場に到着する。県道の反対側には横断幕が並べられ、ゲートの両脇には座り込みのためのテントが設置され十数名の人たちが白いプラスチックの椅子をゲート前のオレンジの線の前に並べ、座りながら談笑している。右側のフェンス前には3人の修行僧が座って念仏を唱えている。左側のテント前にはコンロ、火鉢を置いて、お茶やお菓子が用意されている。天気は快晴。ゲートの向こうには米軍の監視小屋があり、警備員が時折双眼鏡でこちらを覗いている。その場の雰囲気は拍子抜けするほどおおらかだ。でも、この現場で何度も何度も激しいヘリパット建設運動が6年以上も行われてきていた現場なのだ。

薄い紫のパーカに白い帽子をかぶったトッコさんが忙しそうに行き来をしている。「トッコさん!」と声をかけると、向こうも気がついて挨拶。椅子をさっそく出してもらい、オレンジのラインの前に置いて座る。どうやらオレンジのラインを越えるとダメだそうだ。韓国から来たイルカ先生とも挨拶する。イルカ先生は両方の鼻から鼻毛が気になってしまったが、とても柔和な笑顔を向けて挨拶をする。イルカ先生はおどけてオレンジのラインの上を平行棒のように歩いてゆく。もう高江に来て50日以上になるという、毎日座り込みに参加していて、トゥータンヤかたメインゲートまで毎日2往復しているという。東京、岐阜、神奈川、北海道と全国から座り込みにやって来ていた。夕暮れまでゲート前の椅子に座ってトッコさんの話を聞く。今日は正月休みだからほとんど業者の出入りはないが、今月2月までが工期でまだ2割しか完成していないので、仕事明けに大量に入るだろう業者の車を監視して、ゲート内に入れないようにするための座り込みをしている。住民だけでは圧倒的に人手不足であるが、それでも毎晩車中泊をしながら24時間態勢で座り込みを継続しているのだと言う。ここは常に毎日の生活そのものが闘いの現場なのだ。それぞれのチェックポイントで業者の車の確認作業を行う。

日が落ちる頃に、一度メインゲートを離れ石原岳さんの家に行く。なんでもおせちをみんなに振る舞ってくれるとのこと。本人は風邪ぎみの様子だが、家に上げてくれ、奥さんのトディさんの手作りのおせちをいただく。柏屋のスタッフとして働いていた子が石原岳さんの長男だと知って驚く。漆の平皿にきれいに少しずつ盛りつけられた御節をごちそうになる。このとき、沖縄には御節料理がない、ということを始めてしる。旧正月の料理は新正月への移行の中で少しずつ薄れていったのかもしれないと石原さんが話していた。その後再び、メインゲート前に車で向かう。ゲートの前には10人ほどが椅子に座り、火鉢の近くで暖をとっている。行きがけに頼まれて購入したノリがないということで、一騒動あったが探しても見つからないので、そのまま座り込みに参加する。正月ということもあり、沖縄だけでなく、東京、神奈川、岐阜、北海道と各地から応援に駆けつけている。住民の会のメンバーでもあるイサさんの挨拶が心に残る。

「このゲート前の座り込みは小さな空間かもしれないけれど、この座り込みを始めたころは基地に向かってカメラを向けるだけでも警備員が飛び出してきた。でも今はこのように基地の前で車座になり、火を焚いて出入りする車両をチェックしている。この小さな空間は自分たちが運動の中で勝ちとってきた空間なんだ。毎日の運動小さな積み重ねがこのような抵抗を可能にしてきたんだ。抵抗も大事だが、このような場を作り、こうやってお互いが出会い、ゆんたく(話し合う)することも大事なんだ」

正月なので9時には座り込みを引き上げる。トゥータン屋に帰る途中で、新川ダムの道にそれて車を出てから夜空を見上げる。一本道に沿って植えられた街路樹の黒い緞帳に挟まれて、空には滝となり、飛び散った星々のしぶきが頭上から降り注ぐ。宇宙のただ中に浮かんでいるような感覚。

キッチンでは6人くらいがまだ話をしていたので、買って来た食材で3品程度を作る。作ったのは、イカとアスパラのオリーブオイル炒め、ムール貝のワイン蒸し、クチナシのトマト/白ワイン煮の3品。話は運動をめぐるウチナンチュとヤマトの人間の立場と意識の違いについて遅くまで議論する。