北京滞在:7日目

午後3時に安定門駅前でElaineと待ち合わせ。今日は空は今にも雨が降りそうなくらいの曇天なのだが、よくよく見ていると街全体が黄色く靄がかっている。額をウエットティッシュで拭くと、シャワーを浴びたばかりなのにすぐに真っ黒になる。北京北駅で乗り換えて、北京大学や精華大学のある五道口駅で下車。鉄ちゃんに教えてもらったコミュニティスペースの場所を探すが、住所は大きな住宅街高層ビルの26階になっている。しかも、敷地に入るには警備員のセキュリティポイントを通らなければならない。ほんとうにこんな場所にコミュニティスペースがあるのだろうか?と首を傾げながら敷地内のビルの一棟、最上階に登るがそれらしい場所は見当たらない。

一 緒にエレベーターに乗っていた子供たちに住所を尋ねると、隣の棟に案内してくれる。最上階の一室のドアを開けると、そこには大勢の人たちが集まって机の上 で何か料理の下ごしらえをしている。尋ねてみると、今日は皆で餃子を作る会の集まりだとのこと。それにしても、この場所は何なのだろう。普通の高層アパー トの最上階の2階建ての部屋の一室に、あふれんばかりの人たちがあちらこちらうろうろしている。1階部分には共有スペース、事務作業所、キッチン、そして男女ゲストハウスルームがあり、2階への階段を登ると読書や勉強会用のスペース、そして街が一望できる広い屋上テラスがある。

「706 青年空間」という名前のこのスペースは2011年からこの高層アパートの最上階を借りて、ワークショップ、読書会、上映会などの企画をしているという。家賃や運営費はこの案に賛同してくれた人たちのクラウドファンディングによってまかなわれ、また会員となった人は365日さまざまなイベントに参加したり、 企画できたりする権利をもらえるとのこと。もちろん会員でない人も遊びにくることはできる。アングラ感、アナーキー度はゼロ。まあ、ここは日本で言えば東大や東工大が集まっているようなエリアだからそれはそうか。

それでも面白いのは住宅内でゲストハウスも運営して格安で泊まることができるというシステム。ゲストハウスには2段ベッドが置かれ何人かがごろんとしてい た。この北京のスペースを基点に、いまでは中国全土で15のスペースが、それぞれ運営を別にしながもネットワークを作っているという。屋上には椅子やテー ブルが置かれ、皆が思い思いにのんびりしている光景がいい。庭の植木鉢の横でネコがじゃれ合っているし、若者たちもテラスに腰かけてのんびりと話している。何より、高級(?)マンションの最上階に大勢の人たちが、餃子を作ったり、寝ていたり、パソコン仕事していたり、ただただうろうろしているという光景がとてもよい。

空は相変わらず黄色く低く立ちこめている。手が届くかのようだ。屋上のさらに上にのぼってビルの再頂上を散歩してみる。足がすくむくらいの高さだが、こんな ビルが周囲にいくつも乱立している。現代中国の典型的な光景なのだろう。Elaineにお願いしてこのマンションの頂上でポートレートを撮らせてもらう。

夜は、胡堂近くの小さなアートスペースや、日替わりオーナー制の四畳ほどの路上に面したバー「五金」、モンゴル人のカフェ(店主が漢民族がきらいであまりお 客さんの入りはよくないという謎の経緯を聞かされたが、店は昔の民家を改装していてとてもよい雰囲気)。その後に、よくある白人系のクラブに行く。松本さんは、時間を潰すかのようにこのクラブの壁のあちらこちらにMANUKE民宿シールを貼りまくっていた。3時頃に歩いて帰路につく。