松本哉「世界マヌケ反乱の手引書」出版記念トーク@福岡

28日(土)に福岡、Rethink Bookで行われた松本哉氏「世界マヌケ反乱の手引書出版記念トーク。主役の松本氏と、ゲストに「途中でやめる」の山下陽光氏を迎えてのトーク、ここ数年で一番脳みそグルングルンになるほどの面白さが詰まった2時間でした。

 

トークの前は、「いやー、もうまっちゃんと一緒にいても話すことないよ~」と言ってたヒカルさんだけど、いざトークが始まると、スピードに全く追いついていない司会(僕)を気持ちいいくらい無視して、2人が「原発やめろデモ」以降のお互いの道のりについて全速力で振り返りつつ、検証し、さらに新しいアイデアや面白い出来事を企んでいる様子が刺激的すぎて、机の隣で後藤くん(元気な大学生)と一緒にその様子をぼーっと見てた。

 

松本さんが、「数年間、ただただ酒だけ飲んで歩き回って」出会ったアジア各地のマヌケなやつらとの出会いから織り成すアジア有象無象地図を広げると、返し刀のように、ヒカルさんが全国各都道府県の平均家賃を平均時給で割って出た月の平均労働時間の日数によって投影された全く別の思考日本移住地図を語る。2人がこれまで歩いて、調べ、出会ってきた具体性と固有性だけで形作られたアジアと日本の地図が、本屋のテーブルの上でイマージュとなって交差していた。

海外にあんまり興味無いという下馬評を冠していたヒカルさんが、松本さんや僕には馴染み深いアジア各地のマヌケスポット(アークンタワーや徳昌里)について「全く新しく今知りました!超面白い!」という感じで純粋に面白がっていたことも新鮮だったし、移動の中から仕事を作り出す術についてあえて松本さんに問う場面も、全然このおっさんたちの脳みそ錆びてなくて、さらにフル回転しているじゃん、思った。

最後は、ヒカルさんの新たな福岡、謎の無料洋服交換所作戦や、松本さんが前々から話してる遠隔地の店と店を24時間移しっぱなしにする巨大モニター越し酒交流作戦、そして、日本各地のお互いのリソースを全部あけっぴろげにして、家とか店とか、仕事とか交換しつつ、各地(そして海の向こうまで)をどれだけウロウロする作戦などで盛り上がりつつトークが終了した。

この2人、一見やっていることは全く違うし、性格も違うけれど、これまで何かわけのわからない既存の社会の仕組みの中で仕切られ、繋ぎ留められてきた、人、モノ、情報をもう一度純粋循環させ、本来出会わないはずであった未知のモノたちが偶然に出会うための<流れ>を作り出すことに、両人とも尋常ならざる関心とエネルギーを注いでいる点は共通している。流れなんて起きないと思われていた場所に、流れを起こす。それが革命なのだろう。

ヒカルさんが、認知資本主義の極北にあえて全速力で突っ込んでいくことで、「ネットでほとんどの交換が可能になる現在、所与とされてきた(本当はそうではない)自我の欲望ではなく、リアルな他者の欲望に応答しつつ自分の欲望を再設定していく」そのプロセスの中に、人間の代替不可能性を見出そうとしているように見える。逆に、松本さんはあえて交換可能な労働(比較的皆が同様にこなせるゲストハウスやバーの仕事)を、異なる場所でプラグマティックに共有していく場や仕組みを用意することで、まだ見ぬコミュニズムの風を捕まえようとしている(それは、以前ブログでもし家電の部品が同じだったら、いつでもどこでも修理して直して使えると唱えていたことからも察することができる)。

でも、何より本当に2人が、この数年(特にヒカルさんが長崎に移住してからの時間)を、全速力で振り返りつつ、さらに早いスピードで今とこれからの面白い出来事を企んでいること自体が最高に面白くて、トランプの壁とかくそダサくて一瞬で吹き飛ばせるような、そんなパンクな風をビュンビュン感じた2人の対談だった。

その後の打ち上げがまたやばすぎたのだけれど、それは今度東京に行ってこっそり誰かに話したい。